毎年12月にはその年の干支の色紙を飾っています。
干支のお道具を飾るのは、お正月と年の瀬のみ。
あと12年日の目を見ないと思うと、毎年しみじみとしてしまいます。
村瀬明道尼筆 寅
大津・月心寺の前ご住職の真筆です。
月心寺とは、当家が八幡へ移る前に走井餅の商売をしていた場所で、
走井の名水が湧いています。
その地は日本画家・橋本関雪の別荘として買い取られ、関雪没後に関雪と妻ヨネを弔うための菩提寺として
創建されました。
村瀬明道尼は月心寺の二代目の住職で、
庵主さんが走井の名水で作る精進料理は絶品と名高く、
全国より庵主さんのゴマ豆腐をはじめとしたお料理と、法話を求める方が訪れる
人気のお寺となりました。
NHKの朝の連続ドラマ「ほんまもん」のモデルにもなり、
野際陽子さんが、お役を務められました。
村瀬明道尼は生前、毎年年始に当家へお立ち寄りになり、
その年の干支の色紙を紅白でくださいました。
毎年1月には紅色を、12月には白色をかけています。
庵主さんがお亡くなりになり数年たち、
毎年年明けに元気なお姿を見るのをもう何十年と楽しみにしていたので、
なんだか風物詩がなくなってしまったような、ぽっかりとさみしい気持ちです。
「これがほんまもんの走井餅の味や、よう覚えとき」とお弟子さんにおっしゃっていたお姿を
今でもよく覚えています。
若いころに交通事故にあわれ、右手の自由を奪われ、左手で書かれる庵主さんの字は
なんとも力強く生命力に満ちあふれており、元気をいただきます。
こちらは 橋本関雪 寅図
関雪の目に止まったおかげで、走井餅創業の地と走井の井戸は切り売りされずに残ったわけです。
その後100年もの間、初代住職村上獨譚、二代目住職村瀬明道尼、そして現在、関雪のひ孫である橋本家の方へと
関雪の意志は引き継がれ、その庭園やお堂、仏像、走井の名水は残っています。
創業の地が残っているということは、今も走井餅を作り続けている私たちにとってこの上なく
尊く有難いことです。
八幡の地でゆかりの色紙をかけ、大津走井へ想いを馳せ、
今までのそして現在の様々なご縁に感謝の気持ちでいっぱいです。
こちらは石清水八幡宮の虎の絵馬(非売品)。
石清水八幡宮では、楼門の欄間東側に右側の龍と向かい合う形で虎の彫刻が配置されています。
さらに、ご本殿の東御前にも虎の彫刻が配置され、神功皇后さまのご神前を守護しています。
いずれも社殿における重要な箇所に配置されており、
これは聖獣としての地位を表しているとともに、徳川家光の大修造による現社殿において
徳川家康の生まれ年が寅であったことから、徳川家にゆかり深い社寺には
重要な意味があるともいわれています。
来年は卯年。
実は兎も石清水八幡宮とはかなりかかわりの深い生き物なのですが、それはまた卯年になってから
お話しすることといたしましょう。